「古典×現代2020」の感想 後編
前編に続き、
早速各ブースの感想を書いていきたいと思います。
⑤仏像×田根剛
建築家の田根剛さん。2016年にエストニア国立博物館を設計されたそうです。私がエストニアを訪れたのは、おそらく2010年頃なので見ることが出来ず残念。
このブースは「体験型」の展示でした。
ガラスケースの中に入った日光菩薩、月光菩薩がライトによって様々な場所から照らされるのです。
金は、光によって様々に表情が変わります。抽象的な意味ではなく、色の見え方が本当に違います。鉛色にも黄金にも、場合によっては脳が補完して赤や緑にも見えるのです。
昔は今よりも光源が少なかったでしょうから、揺らめく炎に照らされた金像は、仏教信仰と結びついて祈るものにメッセージを伝えてくれたのでしょう。
体験型ブームはコロナ禍で終わると指摘されていますが、皮肉なことにコロナ禍の中で体験型の魅力を知ることとなりました。
はじめ、しりあがり寿氏に葛飾北斎に対する冒涜を感じ、不快感を抱いたことが馬鹿らしかったと後悔しています。
今でこそ偉人のように扱われる北斎ですが、柔軟な発想力は当時異端と扱われていたのですから、そんな彼に変わって細々したことを気にするのはナンセンスでしたね。
これらは全て、リスペクトを持ってオマージュしている作品だということに気づいたときには、爽快感がありました。
しりあがりさんから北斎に対する挑戦状、ラブレター、いや自己アピールのエントリーシートだったわけですね。しっくりくる表現が見つかりました。
その後の「ー葛飾北斎ー天地創造 from四畳半」という映像作品でしりあがりさんのファンになってしまった気がします。この作品でも表現されていたように、北斎は遅咲きの画家なんですね。富嶽三十六景も70歳を超えてから描かれたものです。
帰ってから作品リストを見て、「和紙にインクジェットプリント」との表記にクスリとしました。
その後、そういえば葛飾北斎の富嶽三十六景の画集を持っていたことを思い出し、本棚から久々にひっぱりだしてみました。
この画集は、筆者によって加筆されたコラムが面白くて、
・富嶽三十六景のすごさはその構図
・海外のジャポニズムに影響を与えたのは富嶽三十六景というよりも「北斎漫画」
・北斎の娘、阿栄は腕のいい画家であった
ことなどが書かれていました。
構図に関しては本当に天才的としか言いようがありません。今でこそ飛行機で雲を上から見下ろすことはありますが、空を飛ぶ乗り物が存在しなかった当時、雷を見下ろすという発想は北斎以外持ちえなかったでしょう。
もっとも、構図に関しては北斎のオリジナルばかりではなく、既存の作品から影響を受けているものも多いんですよね。
また、たしかに阿栄に関しては、「吉原格子先の図」が有名ですよね。この技量に対して不自然なほどに残っている作品が少ないというミステリアスな点もまた魅力の一つです。
そして個人的に好きなのが、東海道五十三次を書いた歌川広重とのバチバチです。広重は富嶽三十六景を、「構図ばかりにとらわれて富士が二の次になっている」などと痛烈に批判しているんですよね。その後、広重も富士をテーマにした連載物を書いているあたりにも、強烈な執着と敵対心が見て取れます。
⑦乾山×皆川明
ミナペルホネンのパッチワーク記事の上に、乾山の作品が並べてあるショーウィンドウが一番好きでした。乾山の作品は、まるで北欧食器のように生地に合うんですよね。
尾形光琳、乾山の兄弟によって作り出された数々の作品には、どの時代にも通用する洗練性がありました。
これが本当に難しい。奇人として知られる蕭白と、それに見せられた横尾さんの共鳴ですから、理解しようとするのが無謀だったのかもしれません。
せめてとの思いで、思いがけないところに描かれたというかえるを血眼になって探しましたが、見つからず。木の模様をかえるだと無理やり思い込んで自分を納得させて帰りました。心残りです。まじでどこにいたんだ。
・総括
美術館っていいですね。他の営みに比べて、「何かを見て、感じて、考える」というフィードバックのサイクルが恐ろしく早い気がします。このサイクルを多く回していった人が教養人になっているのでしょうか。
大学生のうちにある程度の教養を得たいと思っていますが、それもなかなか高い望みだと気づいてきました。でも私は「教養コンプレックス」を克服するため、出来る限り頑張ってみようと思います。
さて、今回は以上です。
面白そうな企画のパンフレットを見つけたので、次回はこれに行ってみようと思います。
https://kimonoten2020.exhibit.jp/
このきもの展、前期と後期で展示が入れ替わるようなので、本当は7月中に1度行きたいのですが、大学の期末レポートでバタバタしていて無理そうなので、見られるのは後期展示のみになりそうです。
上で教養云々描きましたが、そんなことは小さなことであって、単純に綺麗なものを見るという体験は癒されますよね。とても期待しているので楽しみです。